MENU

IPOディスカウント、証券会社側の事情

「IPOディスカウント」が実際に行われるのには、企業側だけの「事情」ではなく、企業からIPOの依頼を受けて業務を行う、主幹事証券会社側の「事情」や「都合」も大きく影響しています。ここでいう証券会社側の「事情」や「都合」が、具体的にどういうことなのかと言うと、IPOを行う、主幹事証券会社にとっては株式公開後に株式市場で、株価が下がることは、一般にIPOの「失敗」と見られます。信用第一である証券会社にとって、IPOの失敗は許されないのです。たった一度の失敗によって、将来、IPOの主幹事証券会社として指名されない、という事態になることもありえます。従って、証券会社的にはIPOを行う際は、株式公開時の株価を、あらかじめ若干低めに抑えておいて、公開後に徐々に株価が上がっていく、という現象が最も理想的な「成功」である、といえるでしょう。また、証券会社の収入を詳しく見ていくと、売買手数料という名目のものがあります。この売買手数料というのは、文字通り、投資家が株式を買った際、そして売った際に証券会社に入ってくる手数料のことです。株式の公開時に投資家が株を購入すると、証券会社に手数料が入って来ますが、購入した株をもう一度売ってもらわないことには、次の手数料が入ってこない、ということになり、証券会社としての増収は、最初の手数料以上は見込めない事態になってしまいます。では、投資家達が株を売ろう、と思うのはどういう状況になったケースを指すのでしょう?それはつまり、IPOで購入した時よりも株価が上がっている状況を意味します。ですから、証券会社的には、その状況を演出してやればいいということになります。そのためには、IPOを行う際には、公開価格は若干ディスカウントしておいて、投資家達が株を売りやすくしておく必要があるのです。見方をかえれば、これは株価の操作に当たるわけですが、これも企業が、日本の資本主義社会の自由競争の中で利益を求め、発展していくためのメカニズムだといえるでしょう。また、IPOの際のディスカウントの割合は20%であるべきだ、とか、30%はあるべきだなど、さまざまな意見がありますが、証券業界で上限や下限が決められているわけではありません。よって、証券会社によってある程度自由に決めていいことにはなっていますが、通常は20%〜30%程度のディスカウントが適用されることが多いようです。

IPO、公開までの流れ

IPOはどのようにして公開され、またどうやって購入するのでしょう。さらにそのIPO公募価格はどのようにして決定されているのでしょう。ここではIPOが公開されるまでの流れを、順を追って見ていこうと思います。まず、株式の上場に際しては、株価(公募価格・売出価格)を決めなければなりません。現在、公募価格・売出価格を決めるのには2つの方式が使われています。まず一つはブックビルディング方式、と呼ばれる方式で、もう一つは入札方式と呼ばれる方式です。ではこの2つの方式を具体的にIPOの流れに沿って、説明していこうと思います。まず、ブックビルディング方式ですが、これは株価の発見能力が高い、と判断されている機関投資家等からの意見をもとにして、価格帯と呼ばれる仮の条件を設定します。そしてその価格を投資家に提示した後、発行会社はこの仮の条件を基にして、投資家からの需要を把握し、さらに市場の動向を予想して、市場にあった発行価格を決定する、という方式です。つまり、株式を公開する前に、このIPOを買いたいという投資家を募集してしまうのです。この募集は株を公開する企業が行うのではなく、企業の依頼を受けた証券会社が行っているのが普通です。これがブックビルディング方式とよばれ、証券会社によるこの募集期間のことを、をブックビルディング期間といいます。これに対して入札方式は、まず、投資家がIPOに対して希望購入価格で申込みを行います。その申し込みの状況に基づいて、株の発行の条件や発行価格を決定するという方式です。公平なようですが、この入札方式だと、IPOに際して、株式の取得のために投機的な入札を行うので、人気が高い銘柄だと、発行価格が非常に高くなってしまうケースもありえます。それに対して、ブックビルディング方式は、入札方式に比べると、価格が高くなりすぎるのを防ぐ働きが高い、と言われています。そのため最近はほとんどのIPOの公開は、ブックビルディング方式で決められているのが現実です。では、ブックビルディング方式で行うIPOは完璧なのか、と言うと、決してそうではありません。公開された株式の数よりも、申込んだ投資家の人数ガが多い場合には抽選をすることになります。そして、その抽選に当選した投資家だけが株を買うことができるのです。従って、人気の高い銘柄だとIPOになっても抽選になる可能性が高く、当選して購入できる可能性も低くなってしまうのです。

 

IPOと自己責任、適合性

IPOに限らず、「投資は自己責任である」とはよく言われます。自己責任というのは、「IPOなどの金融商品に投資する場合は、利益ばかりでなく損失に対しても、投資家自身があくまでも責任を持つ」ということです。IPO株の場合、よほどの不人気銘柄の株でない限りは、公募価格<初値となりますので、極端な表現で、ノーリスクであるとか、9割を超える儲け率などといわれる場合もあるのです。これはかなり利益を得る確率の高い投資である、と言えるでしょう。しかし、誰からどのようなアドバイスを受けたとしても、IPO関係の本や、インターネットで情報を得ていても、投資をするかしないかという最終判断を下すのは、自分自身ですし、その判断によってもたらされる利益も損失も、自分の責任になるのです。最近のIPOの公開時の初値を見ると、人気銘柄と不人気銘柄との価格の差は大きく、二極化の傾向は、ますます顕著になってきています。IPOで人気銘柄を申し込むと大きく儲かります。しかしその反面ほとんど利益を見込めなかったり、大きな損失をだしてしまうIPO株も存在するのです。それら全てが、「自己責任」というわけです。これに対して「適合性」というのは、証券取引法に定められている、金融機関に課せられた顧客に対する説明責任の事で、「投資をしようとしている人の資産の状況を的確に把握し、リターンだけでなく、リスクをもきちんと説明して、それを正確に理解している投資家にしかその商品を売ってはいけない」ということを意味します。過去にわが国でも、一人暮らしの老人などに、「絶対儲かる。」とおいしい話を持ちかけて、親切を装って財産をだまし取る、という金融犯罪がいくつかありました。ここまで極端ではなくても、窓口で説明を受けて100%の理解はしていないけれども、しつこく聞くのは恥ずかしいから、と思って契約をしてしまった、ということはありえるでしょう。それが人気銘柄のIPO株ならば、多少の理解不足でも問題はありません。しかし不人気銘柄のIPO株だと、公募価格割れを起こします。その場合「適合性」よりも「自己責任」ばかりが強調されがちです。では、IPOで不人気銘柄をつかまないためには、どうすればいいのでしょう。これには目論見書を熟読しなければならないのですが、素人では中々難しい問題でしょう。資金力はどうしても不利になりがちな個人投資家は、独自の勉強と情報収集、さらには経験をつんで自分を育てていかなければならないのです。